自閉症児と共に生きる

知的ハンディキャップのある自閉症児との味わい深い人生

療育ママ友達の涙

通っている療育では、その月の誕生日をお弁当の時間にお祝いする。

4月生まれの男の子がいたので、皆で歌を歌いながらケーキでお祝いをした。

男の子のママが

「ここへ通い始めた1年前は、息子はできないことばかりだった。ここまで成長してくれて本当に嬉しい」と、涙しながらコメント。

いつもクールな印象のママだったから、彼女の涙に、こちらも思わずもらい泣き。

みんな言葉に出さなくとも、色々な気持ちを抱えながら療育へ通ってきているのだ。

必ずしも前向きな気持ちだけじゃない、ネガティブとポジティブを行ったり来たり

しながら一歩ずつ前へ進んでいくしかないんだ。

息子は6月生まれ。私はどんなメッセージをしよう。

療育スタート

火曜日の療育がスタートしました。

母子共にお弁当持参で、朝は10時までに登園します。

自分の名前が貼られたロッカーに荷物を置き、出席表にシールを貼ります。

朝の会が始まるまでの30分間は自由遊びの時間で、息子はプラレールを見つけると、

大好きなしまじろうをさっさとホッポり出して、電車に夢中になっていました。

朝の会では、児童が椅子を並べてそこへ座り、名前が呼ばれるまでじっと我慢して

待つ練習。息子は一人ではじっと座れないため、私が抱っこしていました。

息子は自分の自由にできないからえびぞって抵抗しますが、じっと我慢。

これが結構体力使います。

名前呼びが終わると母子の活動がスタート。

具体的には、遠足バス、赤い鳥、ちゅうちゅうねずみ、一本橋等の歌に合わせて

一定のリズムで母子が分離して母のところへ戻ってくる練習などをします。

療育を始めた最初の頃は、私と少しでも離れると泣きわめいて大変だったのに

今はニコニコ笑いながら私のところへ駆け戻ってくる。成長を感じました。

お昼は母子で食べます。少し上のお兄ちゃんたちは母子分離で食べていました。

完食するとみんなで褒めます。褒めると達成感に満ちた表情をしていたのが印象的。

ただ、昼食に関しては息子は課題を感じました。

椅子に座っていることができないから。途中で立ったり、床に座ったり、

私の膝に座ってこようとしたり…。

食事の間は椅子にずっと座っていられるようにするにはどうしたらいいのか。

今後先生に聞きながら考えようと思いました。

「療育」といっても、別に訓練じみたことをするのではなく、身辺自立(自分の

ことは自分でできるようになること)と体を動かす中で母子の愛着形成を促す

ことを目的としているようです。

療育自体の成果を期待するよりも、そこで出会った自分と同じような悩みを抱える

お母さん達との交流に期待しています。

家庭での接し方を見直したり、コミュニケーションで工夫できる情報を交換し合ったり。私自身が変わっていくきっかけになるといいなと改めて実感しました。

 

 

療育説明会に参加

4月から週に1回通う区が実施している療育施設へ、通所説明会に行ってきた。

3月にも支援計画を立てるための面談というのを1時間してきたのだけど

今日はその時のインタビューを元に支援計画書というのが出来上がっていた。

息子の支援計画は、長期目標が「要求、拒否を自分から伝えられること」。

そのための短期目標が「サインを使って自分の要求を伝える」こと。

具体的には「ちょうだい」のサインを、自分が欲しいタイミングで自分から

出せるようになること。3ヶ月間が目標で、6月にモニタリングを行うそうだ。

 

療育では、スモールステップ(小さな成功体験を積み重ねていくこと)が

大切というけれど、この支援計画を見た印象は

「ここまでスモールなのか」ということ。

例えば、今回は3ヶ月間かけて「ちょうだい」をマスターしていく訳だけど、

私は「サイン全て」をマスターさせたい(半年ぐらいかけて)という感じで

漠然とスモールステップを捉えていた。相変わらず雑な自分…。

というより、自分はまだまだ息子に過度な期待や要望を持っているんだなという

ことが分かった。

 

実際の療育は4月の終わりから始まるので、その前に「アセスメント面談」

というのがある。保育士と息子が顔を合わせて、保護者の話からは分からない

実際の子どもの様子を見るというのが目的なのかな。

そこの場で先生に「ちょうだい」ができるといいんだけどな。。

 

蛇足だけれど、支援計画には「障害児」という形容詞がついていた。

改めて太鼓判を押された感じで、小さく動揺している自分がいる。

もうだいぶ慣れてきたと思っていたけれど、まだまだ自分の気持ちを

律しきれていないなと。親の気持ちのインナーマッスルも鍛えていかないと

いけないと、改めて感じた日だった。

『ビッグツリー』再読と佐々木常夫さん講演会

【新版】ビッグツリー~自閉症の子、うつ病の妻を守り抜いて~

【新版】ビッグツリー~自閉症の子、うつ病の妻を守り抜いて~

東レ経営研究所特別顧問の佐々木常夫さんの本。

自閉症の長男と肝硬変とうつ病を併発された奥様がいます。

奥様は3回も自殺未遂を起こしており、仕事と家族の看護を

どう両立させたのか、ワークライフバランスの代表みたいな方。

 

実は職場に復帰する少し前に(まだ息子が発達障害と診断される前)

この本を読んでいました。こんなに大変な家庭環境だった方も

仕事で活躍されている。育児をしながら仕事をするなんて全然大したことない。

そんな風に、やる気に満ちた読後感を持っていた気がします。

 

実は、たまたま佐々木さんの無料講演会に参加する機会があり、

先日、再読してみました。

同じ障害を持つ子の親として、改めて佐々木さんに勇気をもらいました。

講演会の中で共感したポイントは以下。

・愛とは責任である

・ちょっと手を差し伸べてやることが大きな救いになる

・実は日本人の5人に1人が何らかのハンデを負っている。

まるで健常者だけで存在する世の中に見えるのは、当事者が声を上げないから。

障害を持つことは悪いことでも恥ずかしいことでも何でもない。

・運命を引き受けよう

・仕事が自分にとって救いになっていたこと

 

『ビッグツリー』の中で素晴らしいなと思ったのは、次男の啓介さんの手紙。

家族関係にとどまらず、人間関係の本質的なことをずばり言い当ててると思いました。

一部引用させてもらうと、

「相手を想う気持ちがあって初めて、何をすればいいか、そしてたゆまぬ努力

が生きてくるのです。「どうしたらうまく人と接していけるのか」と

よく言いますが、その方法を考えるよりまず、どれだけその人のことを想える

かが大切だと思うようになりました」

 

講演会後、息子とご飯を食べました。

唐揚げ一人前をぺろりとたいらげたのにはびっくりしました。

夜はパパと待ち合わせて3人でお寿司。

外食オンリーの休日となってしまいましたが、大変充実した一日でした。

 

発達障害だって大丈夫

素敵な本を読みました。

発達障害だって大丈夫―自閉症の子を育てる幸せ

発達障害だって大丈夫―自閉症の子を育てる幸せ

教育心理学者・小説家・3人の子どもを育てる母と、

3つの顔を持つかっこいい働く女性が書いたノンフィクション。

彼女の2番目のお子さんが、自閉症です。

 

堀田さんの著書は初めて拝見しましたが、全体から感じる

飾らない率直なテイスト、ユーモアが好きだなと思いました。

 

心理学のプロはどんな療育生活をしているのだろうという

興味があったのですが、この本で描かれているのは、

一人の母親として、真摯に子ども達に向き合う普通の母親の姿です。

いつも笑って、時に泣いて、怒っている姿に当事者の母として共感しました。

印象的なフレーズをメモしておきます。

 

「何がこの子のためになるのか」

親のための選択であってはいけないということ。

親が安心するために、普通学級に入れるのはよくないし、

世間体のためであるならなおさら「よくない」と強く言いたい。

子どもは長い時間を学校で過ごします。

そこが快適な場所でなければ、生きている時間が辛くなります。

悪気はなくても、普通学級以外を隔離病棟だといった偏見で受け止める

人が多数いるのを実感しています。

でも、親までもがその偏見に巻き込まれてはいけません。

障害と共に生まれてくるのは、悪いことでも恥ずかしいことでもありません。

先天的にある一定数障害をもって生まれてくこの子は、他の子よりも

不具合や不自由を一人で負ってくれている子なんだという視点も必要だと思います。

 

堀田さんの著書を読み、息子を世間の目から守らなければということに

捉われていたかもしれないと気づきました。

守らなければいけない時もあるし、守ることは大事なんだけど、

それよりも、息子を一人の人間としてリスペクトする視点のほうが

もっと大事なのではと感じました。

今後、息子の環境が変わる節目ごとに、この本を読み返し、息子にとって

大事なことは何かという視点を見失わないようにしたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

支援計画インタビューと福祉主任の優しさ

4月から区が提供する福祉サービスを受けることになりました。

子どもの発達課題に応じて療育プログラムを用意してくれるとのことで

インタビューを受けに行ってきました。

主任という肩書きの女性に、息子の日常生活や困っていることを

細かく話していきます。

ご飯は一人で食べられるか(最近手づかみで食べる)

睡眠障害はないかどうか(ない)

トイレは自分でできるかどうか(できない)

困っていること、1年後にありたい姿は?と聞かれたので

「欲しいおもちゃを見るとお友達から無理矢理取り上げる

気に入らないと髪の毛を引っ張る。ひっかく、怒っていると

手を噛む仕草をするのが困っている。

理想は言葉でのコミュニケーションが取れること、

息子が自分の気持ちをサインや何かで表現できるようになることです」

と、正直に伝えました。

「最近、お友達の髪の毛を引っ張ったり、顔を引っ掻こうとするのを

止めさせたくて、叱る時に手をたたきます。発達障害の子どもにとって

はいけない行為でしょうか」と正直に話すと、相談員の女性は

「たたくことによって、その子はたたくことを肯定してしまうことに

つながります。だから、叩いたり引っ張る寸前に止めさせるのが理想です。

でも、私も子育てをしていて、自分の子どもには叩いたりしちゃいました。

毎日子どもと接していて、目を離さずにいるのは難しいと思います。

子どもが一番混乱するのは、この時はダメで別の時はOKなこと。

だからなるべく今後は息子さんが叩く寸前で止めるようにしてあげてください」

と、答えてくれました。

やっぱりダメだったんだ…。今後は必ずカッとせずに我慢しよう。

息子が叩いたり引っ張ったりしそうな時は寸前で止めさせよう。

主任の方の、相手の主張を受け止めながらやんわりと方向性を提示する

優しさに、助けられた気持ちがしました。

そして、私の短気な性格を治したいと強く思いました。

男性脳と女性脳の違い?

 

息子の発達障害が分かってから、「しんどいなぁ」と感じることがたまにある。

自分と同じような境遇の人がいないから、「そういうことある!」

という気持ちを共感することができない時だ。

 

みんな熱心に話を聞いてくれ、頑張れとか大変だねとか、個人的に励ましてくれることが多いのだが(そりゃそうだ)、一方で「たまにはしんどくなる時あるよね」と、ほんの少しでも共感してくれる人がいればだいぶ気持ちが楽になるのになぁと思う。

 

他の子どもと息子を比べても意味がないことは分かっているし、

息子の障害が好転するわけでも、もちろんない。

障害を受容できなかった時は、

同世代の子ども達のお母さんに会うのが辛かった。

嫌でも、成長の差を感じてしまうからだ。

でも、少しずつ息子の状況をオープンにしていくにつれて、

他の子どもとうちは違うんだって、

いい意味で割り切って考えられるようになっていた。 

ただ、それでもやっぱり「あぁ、定型発達の子って今こんな状況なんだ」って

思ってしまう瞬間はある。

「うちの子ってやっぱり相当遅れているんだな」と思う。

でも、少し時間が経てば「また明日から地道に頑張ろう」につながるんだし、

無意識に比較してしまう瞬間があっても仕方がないと思うのだけど。

「強い」心の持ち主はそうならないようにマインドセットするようだ。

自分の心の変化を予見して、本当に行く必要がある場なのかどうかを

選別しろということらしい。

感情はコントロールできるものなんだから、息子のことを守るためにも、

分別ある大人は自律的に行動するべきだというのが、おそらく夫の弁。 

価値観か考え方の違いだなと思う。

波が立たないように行動するか、波に正面から当たってその後で行動するか。 

逃げたくなる瞬間だってあるし、

実際に逃げてから自分の行動に後悔して戻ってくることもある。

それがリアルな人間の感情じゃないかなと思う。

 

逃げっぱなしだったら軽蔑するけれど、

戻ってもう一度向き合おうって決めた人間を

「弱い」と一蹴するのか、頑張ろうと言えるのかどうか。 

私は自分と同じような境遇の人には、「そういう時あるよね」と、

一旦は受け止めたい。そうじゃないと感情の逃げ場がなくなるから。

逃げ場がなくなった気持ちはいつか暴走するんじゃないかって思うから。 

 

夫とはやはり別の世界の住人同士だと思う。

 

「キレる女懲りない男」(黒川伊保子著・ちくま書房刊)という本に、

秀逸な表現があった。

「思いやりという機能は女性脳独特のもので、男性脳にはその

機能が備えられていない。思いやりで愛を測ってはいけない」

男性脳には、基本甘え(自己優先)やえこひいき(彼女優先)の構造はない」

 

今後夫とのやり取りで気持ちを消耗しないためにも、とても参考になる本だ。

 

キレる女 懲りない男: 男と女の脳科学 (ちくま新書)

キレる女 懲りない男: 男と女の脳科学 (ちくま新書)