自閉症児と共に生きる

知的ハンディキャップのある自閉症児との味わい深い人生

美しい世界に触れて癒される経験も大切

 平日は夕方までガーッと働き、保育園に迎えに行き、ご飯を食べさせ、お風呂に入らせ、余裕がある時は線引きの課題やパズルなどをやり…。

 

典型的な私の一日だが、それが続くと生活に潤いがなくなってくる。

療育もやらなきゃ、あれもやらなきゃと不安で頭が埋め尽くされると、それに和をかけて潤いがなくなってくる。

 

そんな時は、小説を読んで現実逃避するようにしている。

小説を読んでいる間は、その世界に没頭することができるから。

 

最近久しぶりに美しい恋愛小説を読んだ。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

 38歳の天才ギタリストと40歳の女性記者の恋愛の物語を軸に、喪失と再生、親と子、愛と死等さまざまなテーマが複雑に絡み合っていく世界観。

 

平野さんの小説を初めて読んだけれど、こんなに美しい世界を描く人だったとは知らなかった。

そして、恋愛小説なんて、ほんとうーに久しぶりに読んだ。

 

自分は随分と遠くまで来てしまったなと思ったけれど(笑)、これを読んで胸が張り裂けそうな気持ちとか、逆にじわーっと全身が幸福感で満たされていく感じとか久しぶりに思い出した。

 

帯の言葉にドキッとする。「あなたが結婚した相手は最愛の人ですか?」

まるで自分に問いかけられているみたい。

そういう風に思った既婚者は私だけじゃないはずだ。

 

人をこんな風に愛せたという経験があるだけで、たとえその愛が実らなくとも十分に豊かな人生ではないかと思う。

 

主人公たちのその後の人生が、頭のなかで映画のように再生されていく。

そんな美しいイマジネーションを呼び起こしてくる上質な物語だった。