親だって見通しが立たないと不安になる
就学前の今年は、いつにもまして当事者が書いた経験談エッセイの類を読んだ。
息子に障害があると発覚した前後もむさぼるように本に救いを求めていたのだけど、就学前もその時と同じような心理状態だったのかもしれない。
そして、結構「当たりな本」に出会ったきた。それをいくつか紹介したい。
まずはこちら。
文京区議であり、知的障害を持つ娘さんを育てる母親でもある海津敦子さんの本。
一度彼女の講演会に出たこともあるのだけど、元テレビ朝日の報道記者ということもあり、とても論理的で女性的で素敵な人だった。
この本は全7章からなっていて、章立ては以下。
1.わが子の遅れに気付く時
2.遅れを指摘されること
3.療育と子どもの成長
4.周囲との付き合い方
5.障害児を育てること
6.子どもの世界をどう広げるか
7.発達に遅れのある子の親になる
遅れのある子を育てることになった海津さん自身の葛藤を、さまざまな当時者や専門家へのインタビューを通じて整理していってるのかなという印象を受けた。
本を読みながら、海津さんの視点や観点を追体験しながら、自分の息子とのご縁を授かった意味を改めて考え、これからどんな環境設定をしていくことが、お互いにとって穏やかで気持ちよく楽しく暮らすことにつながるのか、いろんなことに考えを巡らせてくれる1冊だった。
何より、目の前に受入れがたい事実がある時、悲嘆にくれるのでもなく、全く何も考えないのでもなく、いろいろな人の話を聞きながら内省し、自分自身の価値観を再構築していく海津さんの生き方に共感する点が多かった。
こうした当事者の先輩の体験談に触れることは、まだ自分自身の見通しが立っていない不安定な時期に読むと本当に落ち着くというか、冷静になれると思う。
子どもは先の見通しが立たないと不安になってパニックになることもあるが、親だって、子どもとの暮らしの見通しが立たないと不安になるのです。
この本はその不安を払しょくする一助になるかもしれない。